日本職人が作る茶箱BOXに高級チョコレートが並ぶ
アメリカ、ワシントン州シアトルにある「フランチョコレート」では高級チョコレートがジュエリーのようにケースの中に大切に並べられています。
代表のフラン・ビゲロー氏は米国のベストショコラティエの名誉を受けた、ショコラティエ。1982年の創業以来、変わらず職人の手でひとつひとつ作られるチョコレートはオバマ元大統領も愛好の逸品で、もらった人を笑顔にするシアトル定番のギフトです。
「宝石のようなチョコを入れるのに相応しい箱がほしい」
フランさんは大切なチョコレートを入れるギフトボックスを長きにわたり探し続け、2001年、その想いは遥か海を超えマスミ東京へと届きました。フランさんと私は話すとすぐに、お互いの「本物をつくる」ものづくりへの想いに共鳴。「フランチョコレートに相応しいのは日本伝統職人が作る箱しかない」フランさんの強い意思と共に箱の制作が始まりました。
フランチョコレート一番の売りはこだわりの岩塩をのせたソルトキャラメルです。塩は湿気に弱く、普通の紙箱は良質な保存状態を保てません。そのため、パッケージには湿気を中に通さない桐箱を使用することとなりました。
機能面のよさはもちろんこのと、大切なものを桐箱にしまうという日本古来の風習や箱を仕立てる職人の技にも価値を感じてくださったフランご夫妻。「本物がほしい」というフランさんの強い思いに職人の技が応え、茶箱BOXが生まれました。
職人の技が織りなす茶箱BOXの文様
15個のチョコレートが4段納められた茶箱BOXは和紙の文様付けからすべて職人の手仕事で仕立てられています。
桐箱の彩りに使われているのは「鳥の子」と呼ばれる和紙。和紙の原紙に色を塗り、その上に雲母の粉を混ぜた絵の具で文様を付けていきます。文様を付ける作業は「雲母摺り(きらずり)」と呼ばれ、模様ごとの版の上に粉上の絵具をのせ写真のように「摺って」いきます。色が和紙に落ちることで文様が描かれていくのです。
ベースの模様を摺ったら、その上に金銀の砂子を振り筒に入れて振っていきます。さらに「小石(こいし)」という箔を小さな正方形に切ったものや、箔を髪の毛より細く切った「野毛(のげ)」を散りばめて茶箱BOXに使用するオリジナル和紙が作られます。
桐箱への和紙の貼り付けには「膠(にかわ)」が用いられました。膠は湯せんして使用する糊で、冷えると固まってしまうため、瞬時に貼り込まなければなりません。職人の技術なしには使いこなせないのが膠です。
茶箱BOXで使用した鳥の子は、お問い合わせいただければマスミの和紙見本帳からも選べます。また鳥の子を利用したインクジェット剥離2号鳥の子二層紙は巾1115mmx50mのロール巻きですが1mから切売りをしています。家庭用プリンターで印刷できるA4・A3サイズもあります。好きな柄をプリントして手軽にオリジナル和紙を作り、手紙やブックカバーなどに使って楽しむことができます。
また写真もこのインクジェット剥離2号鳥の子二層紙にプリントでき2枚に剥がして掛け軸に仕立てることも可能です。
クラフトの際に、初心者の方にも扱いやすい糊は、「小麦純正でん粉正麩煮糊」
その他、掛け軸制作に使われる専用の和紙のりいちばんや柔のり、表装切り継ぎ糊はハンドクラフト全般の接着剤としても人気で接着力が強力で乾燥が速く、さらに表面へのにじみがないため、忙しい作業に最適です。
お客様と一緒に考えて、現代に融合させたい日本伝統の技
茶箱BOXは「特別な箱がどうしてもほしい」というフランさんの強い要望から生まれました。パッケージ作りはマスミにとって初体験。当初は「海外の人に売れるのかな」「桐箱にして高価すぎないだろうか」など不安もありましたが、これまでに3,000箱が出荷され、多くの方が茶箱BOXを受け取っているという結果に、日本の伝統が海外でも認められたことへの安堵と喜びを感じています。
伝統的な技術を現代の空間でどのように利用できるのか、お客様と共に考えていくことで新たな道が開けていくことを実感する仕事となりました。
お客様の「どうしても作りたい」という想いを全力で受け取めるのがマスミ東京のポリシーです。
オリジナル和紙の制作、それらをブックカバー、箱、包装紙などにしたり、砂子や箔を携帯に貼ったり、身近な場所への応用はお手のもの。「和紙や裂地を使ってこんなものを作ってみたい」と考えられたら、ぜひその強い意志や欲求をぜひ私どもへぶつけて頂きたいと思います。職人技術の可能性はみなさんの声の中にあるのです。